第33回 全国ひらがな・かきかたコンクール
当法人では、年間5つの全国コンクールおよび展覧会を開催致しております。「全国ひらがな・かきかたコンクール」は、私たちの綴る文章の約60%がひらがなであることを顧慮し、最も手書き文字に触れる機会の多い幼児から小学6年生を対象に、ひらがな書写力の技術向上を図ることにより、文部科学省指導要領に基づいた書写教育の普及に寄与することを目的に開催しております。 集まった応募作品は、中央審査委員の先生方により、厳正かつ公平な審査が行なわれ、各賞が決定いたしました。
審査委員の先生方および特別賞受賞者のコメント・作品掲載は下記よりご覧ください。
東京オリンピックの感動とひらがな・かきかたコンクール
中央審査委員長 (一社)全国書写書道教育振興会
会長 栁下 昭夫

コロナ感染のニュースに明け暮れ不安をおぼえる日々ですが、今回も、皆様のご理解、ご協力をいただき、実のあるひらがな・かきかたコンクールにできましたことを心より感謝いたします。
賛否に揺れながらも開催された東京オリンピックではありましたが、特に若い人々の活躍には目を奪われました。全力を尽して競技にうちこむひたむきな姿、やりきったという歓喜と涙、幼少時代からの学びの大切さをしみじみと感じた大会でもありました。
教室での学びに困難をきたし、やむなく閉室されたとの声も聞かれるこの頃ですが、事務局では、幼児、小学生の出品者の練習を少しでも応援したいと工夫と努力を注いでまいりました。全書会のホームページやSNSを閲覧し、情報を生かしながら出品された方々が多くみられたことに時代の流れを感じたコンクールでもありました。
幼児、小学生時代の一日一日の学びが、子どもの成長にとってどれほど大切であるかということは、オリンピックの若い人々の活躍だけでなく、ひらがな・かきかたコンクールにも強く感じました。高学年の方々の作品の完成度の高さがよくそれを物語っているようにも思いました。用具を見事に使いこなし、美しい線質、整った字形、作品のすみずみにまで目を注いだ美意識に心をうたれました。このコンクールが、学ぶ喜び学ぶ大切さを体験し、みなさんの成長に少しでもお役にたてればと願っております。ひらがなは学びの基礎であり、美しく整ったひらがなが書けるということは、学びへの大きな自信にもなります。ひらがな・かきかたコンクールが少しでもみなさんの学びに、成長にお役にたてるように、一層の充実発展を期したいと思っております。最後になりましたが、本コンクールにご理解ご支援を賜りました皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
心の軸を保つ
一般社団法人 全国書写書道教育振興会学術顧問
日本書写書道検定委員会名誉会長
吉田 宏

第三十三回全国ひらがな・かきかたコンクールに入賞の皆さんおめでとうございます。
昨年の今頃は、学校や園、塾などでの活動が中止され、いつこの状況が収束するのかわからないまま、制限された生活が今でも続いています。このコンクールに出品される皆さんの一年という時間は私たち大人が感じるより、遥かに長く、出来なかったこと、形が変わってしまったことなど強く残念に思っておられるに違いありません。けれども、今年度最初の全国大会に集まった、生き生きとした皆さんの文字を拝見して、こんなに強い逞しい力がこの国には、沢山あるのだと心から嬉しく感じられました。
皆さんがこれから歩んでいく先には、未来があります。それが輝くものになるかどうかは今の自分次第です。
まずは、夢や目標を考えてみましょう。そしてそれを叶えるためにどんな方法があるのかを探してみましょう。広く大きな世界には沢山の方法があり、夢や目標を叶える方法の掴み方は、一つだけではないということを忘れないでください。
特に今、先の見えない、自分で決めることの出来ない状況に、悲しいことや悔しいことも沢山ありますね。それを声に出して誰かに話してみましょう。目先のことに惑わされず、心の軸をしっかり持つことで、希望のたくさんつまった未来が待っています。そして、日々の生活を送れることに感謝して過ごしていきましょう。
最後になりましたが、コンクールを開催するにあたり、困難な状況にも関わらず甚大なお力を賜りました審査委員の先生方、大変なご苦労の中ご指導にあたられた指導者の皆様、保護者の皆様に心より感謝申し上げご挨拶とさせていただきます。
平仮名の姿
前文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官
加藤 泰弘

第三十三回全国ひらがな・かきかたコンクールで受賞された皆さん、本当におめでとうございます。
この一年半は、新型コロナウイルスの感染がおさまらない中で、本コンクールの本審査も、オンラインを利用した画期的な審査が導入されています。また、一方で、紙と筆記具のふれあいとも言うべき「手書き」の大切さや価値を再認識しました。
さて、私たちの言葉である日本語は、三種類の文字をもっています。中国から受容した漢字、漢文を訓読する際に、右側に付された送り仮名から生成したとされる片仮名、和歌などを書くために漢字の音を借りて記すことから生成し、平安時代に大きく成長した平仮名。やがて、この漢字と仮名を交えて書く漢字仮名交じり文が書かれるように至りました。このような姿が大きく異なる三種類の文字を交えて書く言葉は他に存在せず、我が国独自の文化であると言えます。とりわけ、平仮名は、多くの日本人が、和歌などを書いていく中で磨かれ、曲線的で柔らかい、日本を象徴するような美しい姿として完成を遂げた文字です。
審査にあたっては、一筆一筆の始筆・送筆・終筆の運筆の様子、字形、全体構成(配列)の確かさを確認していきました。どの作品もレベルが極めて高く、日頃の練習の積み重ねから生み出された作品であることが感じ取れました。
今回のコンクールへの出品を通して、文字を正しく整えて書く書写力が高められ、書くことの魅力を実感したと思います。この確かな書写力を、是非とも普段の学びや生活の中で生かすようにしてください。皆さんの更なる成長を期待しています。
もっと真剣に取り組んだら?
元立正大学大学院文学研究科教授 松村 定男

第三十三回全国ひらがな・かきかたコンクール受賞者の皆さん、おめでとうございます。
今回は、年中から小学校六年生までの審査をさせていただきました。
上位作品は、形、線質の美しさ、配置、本文と名前のバランスがとても素晴らしかったです。
年中から小学校三年生の作品では、形は良く書けていましたが、細く、弱い線の作品が数点見受けられました。筆記用具を変える、筆圧を強くして書くなどの工夫をして下さい。
筆記用具の選択はとても大事です。自分にあった濃い目の筆記用具を選択して下さい。また、筆記用具の先がきちんと削れていることが大切です。 小学校四年生から六年生の作品は、本文を良く書かれている作品が多くありました。しかし、名前の字が曲がったり、大きすぎた作品が数点ありました。名前も丁寧に書くことが大事です。
もっと真剣に取り組んだらについて、PHP編集部『心を豊かにする100の言葉』の中で、日本プロ野球名球会初代会長の金田正一さんは、次のように述べられています。
「監督から言われた言葉が、私の野球人生を変えた。『野球にもっと真剣に取り組んだら?』体調管理がおろそかであることを指摘されたのだ。その瞬間、もっと高いレベルでのプレーを目指し、厳しい自己管理を自分自身に課した。多くの記録を残せたのは、徹底的な摂生の賜物だ。
何事においても、本当に真剣に取り組めば、結果の如何にかかわらず満足感が得られる。それに、努力すれば自然とよい結果もついてきて、喜び、快感を味わうことができるものだ」
ここでは、日頃の中で自分自身の健康管理をきちんと行ない、真剣に野球に取り組んだ結果よい成績を残せたことが述べられています。 皆さんも健康に注意をし、さらに真剣に文字を書くことを努力し、よい結果を残して下さい。
「審査を終えて」
元文部科学省検定小・中学校教科書筆者
江﨑 美里

第三十三回全国ひらがな・かきかたコンクールで受賞された皆さん、おめでとうございます。コロナ禍の中、コンクールが実施され多くの作品が出品されたことを喜ばしく思います。
硬筆・毛筆共通して感じたのは字形がとても美しいということです。ひらがなは字数が限られているのでしっかりと字形をつかむことが文章を美しく書く上で大切になります。しかし、ひらがなは用筆がむずかしく曲線が中心となるため、字形を安定させるのは簡単ではありません。上位作品はどれも字形が安定していました。
ひらがなを書く時、特にむずかしいのは線です。ひらがなは線を中太に書くことが多いです。漢字と少し似た始筆で書く場合もありますが、すうっと進みながら入ることが多くなります。この用筆はとても高度な技術です。上位賞の評価を分けたのは線だったと感じています。
硬筆について。高学年ではマスがなく行に書きます。どの作品も字形が安定していましたが、中心を通すこと、字間をうまくとることがむずかしかったようです。たて長・横長・少し小さめなどの外形をよく意識して文字の書き出しの位置を決める必要があります。たて長の文字の位置が特にむずかしかったように感じました。小六では「とっても」の「と」に対する「っ」の位置が近すぎる作品もありました。
毛筆について。ひらがなは筆圧を調節しながら書くのが大変むずかしいのですが、よく筆をコントロールして書かれていました。小四の課題では、一文字分のスペースがたて長になっているのでとても書きにくかったことと思います。「が」はやや横長の外形なので、たて長のスペースに合わせてしまうと字形がくずれてしまうので注意が必要でした。
来年はオンラインではなく、直接作品を拝見できますようにと願っています。
自分に向き合う時間
一般社団法人 全国書写書道教育振興会副会長
日本書写書道検定委員会会長
吉田 享子

第三十三回ひらがな・かきかたコンクールに入賞されたみな様、おめでとうございます。
このように長きに続くとは思われなかったコロナ禍・・・本年も不自由な中での練習、そして作品仕上げだったことと思います。
コロナ感染症は私たちに大変な負担となりましたが、行動自粛となった今自分に向き合う時間が増えたのではないでしょうか?そうした中、「打ち込めるものがあることがとても幸せなことです。」とある出品者の親御さんが話してくださいました。夢中になってできることがあることは、どんな困難も乗り越えていける強さを与えてくれます。この大会がその一助になっていることに大変意義を感じた一言でした。
本年全書会ではホームページにて、参考手本・練習プリント・動画手本など、練習コンテンツを配信させていただきました。あくまでも参考手本ですので、この通りに書かなくてはいけないというわけではありませんが、コロナ禍の中在宅時間が増えた子供達の学びの参考にと配信させていただき、多くの方に利用していただきました。
特に各学年ベスト10の作品はみなさん甲乙つけがたいものでした。字形だけでなく、筆や鉛筆の使い方に至るまで、よく学ばれた作品でした。鉛筆の作品は、強弱を出したいがあまり、太くなりすぎていく傾向があります。鉛筆という用具を使っての作品仕上げです。毛筆のような線は必要ありません。また逆に、シャープペンシルで書かれたような細く均一な線で書かれた作品も見受けられます。鉛筆という用具を生かした作品仕上げを目指してください。
最後になりましたが、このような状況の中本大会に出品いただいた皆様、ご支援いただいた皆様に深く感謝申し上げます。
最後まであきらめない気持ちが大事
一般社団法人 全国書写書道教育振興会中央審査委員
中里 久乃

第三十三回ひらがな・かきかたコンクールに入賞されたみなさん、おめでとうございます。
このコンクールも昨年同様コロナ禍の中での開催でしたので、思うような練習が出来なかったり、ご指導された先生方のご苦労もあったことと思います。そのような中でも皆さんの一生懸命練習に励んで仕上げた心のこもった素晴らしい作品がたくさん集まりました。出品点数も昨年よりも4,614点の増加があり、とても嬉しく思います。
今回の審査はコロナ感染拡大の影響もあり、オンライン審査で行われました。オンライン審査でも実物の作品同様一枚一枚の作品を拡大して細かな部分まで確認して審査いたしました。
◎硬筆の作品について
低学年では、上位の作品はしっかりとした線で字形も整っていて名前も上手で立派な作品でした。名前は日常生活でもとても大切です。低学年の頃からきれいな名前が書けるように名前の練習にも力を入れてください。
高学年では、上位の作品は字形、文字の大きさ、配置、全体のバランスが良い素晴らしい作品でした。
◎毛筆の作品について
それぞれの作品を見ていると基本のとめ、はね、はらいに気をつけて文字の大きさや字形を整え集中して書いている皆さんの様子が伝わってきます。また、三文字、五文字の課題は文字の配置が難しかったと思いますが、上位の作品は文字の大きさや余白を良く考えてバランスの良い立派な作品でした。
ひらがなは日常で使う文字の六割を占めると言われます。そのひらがなが上手に書けるということは、一生の宝物でもあります。日本の文字文化のひらがなを大切に小さい頃からしっかりと身につけてください。
今年の夏は東京オリンピックが行われ、日本の選手の活躍も目立ち、多くのメダリストが誕生し明るい話題となりました。金メダルを獲得したある選手の言葉に「最後まであきらめない気持ちが大事」とコメントがありとても印象的でした。オリンピックまでに大変な練習の積み重ねがあったと思います。強い信念をもって競技をしている選手の姿にはとても感動しました。皆さんも練習などで思うようにいかない時もあると思いますが、途中であきらめず最後まで頑張る気持ちを大切にして欲しいと思います。
次回も更に向上した素晴らしい作品を期待しています。
文部科学大臣賞
ひらがな名誉大賞
日本書写技能検定協会理事長賞
スタールビー賞
特別ダイヤモンド賞
●入賞者数一覧
