審査講評

中央審査委員長 (一社)全国書写書道教育振興会
会長  栁下 昭夫

相手への思いを深め美意識を育てる

最近、年賀のごあいさつも多様化し、年賀はがきをお出しする人が年々少なくなっているというお話が聞かれるこのごろですが、しかし、今年も多くの団体、多くの皆様から、すばらしい年賀はがきの作品をご出品いただき、心より感謝申し上げます。
 年賀のごあいさつが多様化しているとはいえ、年に一度の年賀はがきにこめた新年のごあいさつは、いつまでも相手の手もとに置かれ、大切な思い出ともなって心に残るものです。工夫をこらし、心をこめてていねいに書かれた年賀はがきには、相手への思いや、書いた人の人柄までもしのばれ、深く心にしみます。
 今年は幼児の出品が増加し、作品も向上し、幼児期からの関心が深くなってきていることを実感しました。また高学年になるにつれて用具にも心を配り、特に、高校、大学、一般の方々では毛筆作品が目立ち、その作品の出来ばえは、まさに年賀はがきのお手本を見る思いでした。
 年賀はがきは、新年のごあいさつにとどまらず、書写力を高め、また、配置、配列、余白の生かし方と、書面へのすみずみにまで行き届いた美意識の向上に大きく役立っていることを痛感いたしました。
 この年賀はがきコンクールの大切さを考え、ますます充実発展しますよう願っています。


(一社)全国書写書道教育振興会学術顧問・毎日書道会書教育顧問
加藤 達成

中央審査会講評

1月22日、23日は日本全国的に大雪となり、銀世界の清厳な雰囲気の中で、上記の審査が新宿文化センター第5会議室で行なわれました。
 年賀状は、日本古来の歴史と、日本人の智性と感性の品位を持った文化の絆で、素敵な年頭習慣と言えます。文字文化がはがきに凝縮され、新年を他と共に寿ほぐ、思いやり、励まし合う賀状は誠に欣喜この上もない幸福行為と全国に及んでいます。ほぼ全体の交流は男性、女性ともに73.9%で、葉書による年賀状は今後も継続されて行く日本文化です。
 本会の年賀はがきコンクールは、34年前に遡ります。創立は名誉会長 吉田 宏先生の用美一体論の理想を実現された情熱的使命感の結晶で、心より発足時を偲ばずにはいられません。
 審査会は、9枚の審査資料に基づき、代表理事の懇切な説明と中央審査の核格、即ち、書写学習の習得を共に、培われた、基礎力をもとに、古典などの文字文化としての格調の高さを鑑別する審査会で、文部科学省の学習指導要領にそった「正しく整った読み易い文字」を選定する事、公平厳正を旨とした審査会となりました。
 私は、吉田 享子先生と大学・一般の作品を担当することになりました。
 ○大学の部
 硬筆・毛筆による作品、大学生の実用美、芸術美の調和と、個性美、躍動美が、伝統性と現代性を踏まえた力作ぞろいで、賀状によせる文化への情熱を感じ取りました。
 表現では、布置、構成がよく研究工夫の跡が見られ、丁寧さと運筆にリズム性が加わり文字の大小が全体感を引き締めて、戊戌の表記、氏名の謙虚さも控え目で好感がもてました。
 ○一般の部、シニアの部
 自由性に富み、古典的な趣向を、経験豊富なタッチで、素晴らしい作品群でした。安定した美しさ、応用的な構成は、力強さと、自信に溢れた個性美は、人生の努力の跡を表白して圧倒されました。生涯学習の実践者に敬意を払い選別をいたしました。
 ○シニアの部
 特に80代の高齢者の作品は、優れた賀状で、最高位を及第された作品は、変体仮名を調和させ、古典を重視された自由駆使の賀状で驚嘆しました。
 1月24日の審査に参加できた私は、審査にあたられた諸先生と御一緒に、厳正な審査ができましたことを感謝しつつ擱筆します。ご入賞おめでとうございます。


(一社)全国書写書道教育振興会顧問
渡辺富美雄

心と心の通じ合い

全国年賀はがきコンクールは、第34回を迎え、名実ともに充実したコンクールになりました。
 今年は、平成30年の節目に当たり、特に印象深い年賀状作品でした。皆さんが書いて下さった年賀状も、年を重ねるとともに、それぞれ素晴らしい年賀状が多くなりました。
 年賀状は、新年に当たっての挨拶ですから、それにふさわしい言葉が大切です。自分の今年の目標であったり、夢であったり、相手を思いやる言葉であったりします。それにふさわしい文字が大切です。挨拶や心の通じ合いは、これが基本です。
 今年は、主に5・6年の年賀状を拝見し、手書き文字で、丁寧に書いていて、このような年賀状をいただいたらきっと喜び、感激するだろうと思いました。
 特に注意することは、漢字と仮名交じりの文ですから、漢字と仮名の調和を考え、文字数も多いので、文字の配列を工夫すること、それに、平仮名の字形、一字一字の大きさなど工夫しながら書くことにより、全体が整ってきます。それに用具の選択も大事なことです。それは特に、文字の「起筆、運筆、終筆」に関連するからです。
 また来年もよい作品を作成して下さい。


文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・東京学芸大学教授
加藤 泰弘

手書き文化の一層の広がりを

第34回全国年賀はがきコンクールにおいて受賞された皆さん、おめでとうございます。
年賀はがきの発行枚数が年を追うごとに減少していると言われます。一方、情報機器がほぼ個人レベルまで広がり、近年は手書きが見直されています。文房具売り場には、おびただしい種類の筆記具が並び、手書きにこだわり、自分にあった筆記具を選ぶという人が確実に増えています。
東アジアの漢字文化圏では、これまで先人たちが手書きすることによって「書」という芸術文化を成立させました。その表現の豊かさと広がりには圧倒されるものがあります。年賀はがきを送ることは、その文化的広がりの一つと言えましょう。また、私たちには、誰もが言葉(文字)を美しく書きたいという気持ちをもっています。
今回、心をこめて年賀葉書を書き、本コンクールに出品することで、皆さんの書写能力の高さが認められました。幼稚園、小・中学生までの皆さんはその確かな書写力を普段の学びや生活に生かしてください。高校生以上の皆さんは、手書きすることの価値を考え、それを社会に広げてほしいと思います。本コンクールの輪が一層、大きくなることを期待いたします。


東京学芸大学名誉教授
長野 秀章

審査を終えて

第34回全国年賀はがきコンクールの開催誠におめでとうございます。
 念頭に届く”年賀としての祝意を我が国の伝統行事として大きくとらえ、伝統文化に位置付けされておられる貴会の姿勢に対して、心より御礼申し上げるとともに前文科省調査官としても感謝申し上げる次第です。
 今度の学習指導要領においても”手書き文字”の大切さはもとより、文字文化の重要性は、小・中学校の国語科教育においても益々重要視されてまいりました。
 このコンクールに入選入賞された皆さんが、一つ一つの文字を大切にしながら、年賀はがきの限られたスペースに”言葉として”表現されたことは、審査員の一人としてその文字の美しさに大変感動を覚えました。
 どうぞこれからも”手書き文字”の大切さを、我が国の大切な文化として継承していただければ幸いです。この度はおめとうございました。


(一社)全国書写書道教育振興会顧問
吉田  宏

目は知識の窓

第34回全国年賀はがきコンクール受賞者の皆さんおめでとう御座います。
 本年も地道な努力の結晶を存分に注ぎこまれた作品が全国からたくさん集まり、上位入賞の作品審査については、優劣つけがたく審査の難しさを改めて感じました。また、シニア部門の皆様は、どれを手にとっても精彩を放つ作品ばかりで「書」を生涯の目標として極め、取組んでいらっしゃる様子がうかがえました。
 目は知識の窓と言います、今回の入賞作品はどれも鍛錬を重ね磨き上げられたもので、地道な努力の結晶であると言えますから、受賞者名簿やネット展で多くの作品を見て、感じて、次の作品への新たな目標を定めていただきたいと思います。
 最後になりましたが、本コンクールを開催するにあたり、ご指導にあたられた先生方、そして温かいお気持ちでいつも子ども達を見守ってくださるご家族の皆様に心より感謝申し上げます。


(一社)全国書写書道教育振興会副会長・日本書写書道検定委員会会長
吉田 享子

伝統文化としての年賀はがき


新年の挨拶は、毎年変わらず行われる年中行事のひとつです。その新年の挨拶の一つ年賀はがきを使ってのご挨拶が減ってきたとの声が、ここ数年聞かれます。日本の伝統行事として連綿と続いてきたこの習慣を、様々に便利になっていく今こそ大切に残していきたい事柄の一つと感じます。
 そんな思いも込めた本大会に本年も、一文字一文字丁寧に書かれた作品が多く寄せられました。大会に出品され最終審査に残った作品はどれも甲乙つけがたい秀作ぞろいです。まさに「書は人なり」作品を書いた皆さんの人柄を映し出しているようにも感じます。入賞するか否かは本当に紙一重の差です。見事特別賞に入賞された皆さんはその力に磨きをかけ、また惜しくも逃した皆さんも次に向かってさらに研鑽を積み作品作りに力を注いでください。
 1年に一回、年賀はがきを前にして自分の言葉を自分で丁寧に書くこの伝統が力強く残っていく事を願い、来年も素晴らしい作品にお会いできる事を楽しみにしています。
 最後になりましたが、本大会にご協力いただきましたすべての皆様に心より感謝申し上げます。


元東京都中学校書写研究会長
浅井 幸夫

年賀状の行方

1月1日から7日までに投函されたはがきは、年賀状として52円で扱われ、8日以降は普通はがきとして扱われる事となり、10円切手を貼って投函するよう郵便局から注意があった今年の年賀はがき事情でした。10円安く出せるなら期間中に出そうと考える人、期間を限るなら他の方法手段を選ぼうと考える人、と二者に分かれたと思います。あるいはこの際いっそ出すのをやめてしまった人もいるでしょう。
 前述の杞憂が少しずつ表れる傾向で応募作品の減少が気がかりです。
 そんな中で、第34回全国年賀はがきコンクールに出品受賞された皆さん、おめでとうございます。来年も続けて応募するよう期待しています。


なの花書道会会長
金子 良惠

審査を終えて

第34回全国年賀はがきコンクール受賞者の皆さん、おめでとうございます。
 通信手段の多様化で、年賀状が減少している中、実力の向上を目指し、一点一画心を込めて書かれた作品、あたたかみを感じる作品を審査できましたことうれしく思います。
今回は、高校生の作品を審査させていただきました。線質がさえ、美しい流れのある作、文字の大小の組み合わせ、強弱、余白の美しさ、配置・配列の見事な作品が多くありました。中でも、小筆で書かれた作品に工夫が見られ、一筆一筆慎重に書かれていることに感動いたしました。日頃の練習の成果が発揮できていたように感じました。
 「はがき」という限られた大きさの中に、氏名の位置があがりすぎたり、つまりすぎたりしたため、全体のバランスを崩してしまった作品がありましたことは残念に思いました。
 これからも、一点一画を丁寧に書くとともに、筆脈を考え、言葉としての調和はどうか、氏名の配置はどうか、を考えながら書くようにするとよいと思います。
来年も、手書きの美しい作品に出会えることを楽しみにしています。


清光書道会理事
氷田 光子

審査を終えて

受賞された皆さん、おめでとうございます。
 普通一般の硬筆コンクールの場合、用紙に枠、枡目、罫線の他、名前(氏名)を書く為の枠まで指定されているので、その中にも文字がはみ出さないように書く事が望まれます。年賀はがきの場合はどうですか。枠、枡目、罫線が全く書かれていない用紙の中に、漢字、平仮名、名前(氏名)まで納めなくてはいけません。練習の段階で、上下左右の余白を見ながら書く文字の配置を念入りに決めると良いと思います。左右はだいたい同じくらい空くのが良いでしょう。賀詞、その年の抱負、年月日まで書くとどうしても名前が左に寄ってしまう事が多く、右の余白よりも左の余白がなくなってしまいます。上下はどうでしょうか。上よりも下が多く空く方が良いでしょう。その年の抱負が二、三行になってしまう時に、下が狭くなってしまう事が多いので注意しましょう。次回も挑戦する人は、余白を考えながら作品を作ってみてください。
 来年もより多くのすばらしい作品を期待しています。


元東京都小学校国語教育研究会書写部長
永島 國雄

審査を振り返って

受賞された皆さん、おめでとうございます。
 年々、年賀はがきはパソコン等で印刷したものが多くなる中、今回のコンクールに幼児から一般・シニアの方まですばらしい作品がたくさん集まりました。年賀はがきを書くときの要領としては、紙面に対して、上下・左右の余白と行間の取り方、行の中心、文字の大きさ、文字の形などに気をつけて書くことが大切です。
 今回は幼児の作品を中心に審査をいたしました。この年齢の子ども達は、手先の機能に不十分さが見られ、、鉛筆を正しく持って文字を書くにも難しい時期です。しかし、作品を見ると、筆圧や運筆もしっかりしており、マス目のない白紙に文字の大きさや行の中心に気をつけて、丁寧に書かれている作品が多く見られました。
 次回も皆さんの作品に出合えることを楽しみにしております。


日本武道館書写書道手本筆者
西城  研

審査にあたって

第34回全国年賀はがきコンクールにご入賞の皆さんおめでとうございます。
 今回、中学生の作品を審査させていただきました。
 まず、正しく整った字を書く中学生がこんなにいるんだ、と喜ばしく思いました。中でも少数ではありましたが、筆で挑戦された作品は目を見張る美しさがありました。硬筆作品も、字形整斉かつ筆圧の変化のあるものが上位になったようです。
 一部ではありますが、葉書サイズに対して、字が大きすぎ・太すぎるものや、「発」の3~5画目の筆順を正しく書いているかな、と思う作品が散見されました。そのような作品はどうしても見劣りしてしまいますので、正しい形をしっかり調べ、適確な大きさをつかんで書いてほしいと思います。又、良く書けているものの、全体が下がり、配置で惜しかった作品もいくつかありました。特に応募用紙に直接書く場合は、余白にも気をつけることが大切です。以上のことを次回への課題としてほしいと思います。
 誰が見ても、上手い!という字を書くのは容易なことではありませんが、上位に入賞された作品はとても上手で、そう思わせるだけの努力が伺えました。


元立正大学大学院文学研究科教授
松村 定男

新鮮な心

受賞者の皆さんおめでとうございます。
 今回は、小学校三・四年生の作品を審査させて頂きました。上位の作品は、上と下の余白、左右の余白が適切でありました。また本文と名前の大きさ、漢字とひらがなのバランスが整っていました。今後筆圧を工夫すると線質が良くなり、なお一層良い作品になります。
 パナソニックグループの創業者の松下幸之助は、『続道をひらく』の「この日のこの朝」の中で、新鮮な心を次のように述べています。「立ちどまってはならない。きょうの営みの上に明日の工夫を、明日の工夫の上に、あさっての新たな思いを、そんな新鮮な心を持ちつづけたい」
 大事なのは、「日々新た」であります。常に新たな気持ちで試行錯誤して練習に励み、よりすばらしい作品を生みだされることを期待します。


日本書写書道検定委員会審査副部長
中里 久乃

審査を終えて

 入賞者のみなさんおめでとうございます。今回も幼児からシニアの方までのすばらしい作品が集まりました。このコンクールは、マスや罫線のない用紙に仕上げるので曲がらないようにバランス良く書くことが難しいと思います。その中で上位の作品は、余白の取り方や全体のバランスが良く、一文字一文字丁寧に書いた美しい線質の作品に感動しました。その一方、下の余白が狭く残念ながら詰まってしまった作品が数点目立ちました。全体をよく見ながら文字の配置を考えて書くと良いです。
 幼児小学生は鉛筆の太さ濃さによっても作品の見栄えが大きく違ってきます。鉛筆の薄い作品は、どうしても弱い印象になってしまいます。使う人の筆圧によっても違いができるので、自分に合った鉛筆を選んでください。
 来年もみなさんの心のこもったすばらしい作品に出会えることを期待しています。