審査講評

中央審査委員長 (一社)全国書写書道教育振興会
会長  栁下 昭夫

大切な用具の選び方と使い方
一字に込めた豊かな感性

 硬筆は、生活には欠くことのできない大切な用具です。公的な申請書、報告書、記録や手紙なども硬筆で書かれることがほとんどです。硬筆による文字を、正しく読みやすくきれいに書けるようにすることは、基礎的な学力であり、人間としての大切な教養の一つであるともいえます。硬筆コンクールでは、ていねいに書写することを通して、日常生活における書写する能力を高め、豊かな感性を育てていただきたいと願っています。

 硬筆コンクールでは、「正しく整った読みやすい文字」を審査の基本にしていますが、今回の審査では用具の選択と使い方、その特性の生かし方の大切さを痛感したコンクールでもありました。鉛筆でも、書写する文字の大きさに対して、線が細すぎたり、太すぎたり、また、うすすぎたり、濃すぎたりすると表現効果に大きな差が出てしまいます。テレビ番組やドラマなどで登場人物の書写する姿を見ることがありますが、筆記用具を上手に使っていない人を目にすることがあります。字形を整え、読みやすく、きれいな文字を書く決め手は、やはり、用具の選び方、使い方にあるともいえます。目的や用途に即して適切な用具を選び、その特性を生かして効果的に書写するという能力、美的感性がいかに大切かを考えさせられました。特に高大一般の方々の作品では、精神を集中し、一本の線にも細かい心を配り、点画の連続、連綿の細い線にも気脈が通り、緊張した線質、変化に富んだ豊かな表現が心にしみました。

 このコンクールが、学力の基礎となり、生活の力として生き、美意識を育て、豊かな感性をはぐくむことに少しでもお役にたつようにと願っております。最後になりましたが、ご関係の皆様のご熱意、ご尽力ご支援に心より感謝申し上げます。


元佛教大学教授・文学博士・毎日書道会書教育問題顧問
加藤 達成

用と美の質を高めた硬筆の手書から

33回と記念すべき全国硬筆コンクールで受賞されたみなさん、そしてご家族の方々、おめでとうございます。本会の中心行事とも言える他にない硬筆コンクールが33回に及ぶという事は、創立以来「硬筆書写」の持つ、用と美の表現力を身につけ、創造力の向上と発展に、終始ご尽力を傾けられた、名誉会長吉田宏先生の情熱と、事務当局の教職員皆様の絶ゆまぬ精励の結晶で、33回が充実発展した大会であったことを心からお喜びと、敬意を表します。今回のコンクールの理念は「安心で明るい社会」の構築をテーマに、又過去に出題された種々の課題も加味された、人間形成の育成を目指された硬筆コンクールであったと、絶讃せずにはおられません。今回のコンクールへの出品作者は、全国各都道府県より多くの作品が揃い、名実共に我が国唯一のコンクールであると称讃し、深甚の敬意を表し、長い道程の上での御努力に対し、心からお喜び申し上げます。今回、中央審査会の私の担当は、総括審査と、大学・一般の部で、書写検会長吉田享子先生と二人で鑑別審査に当たり、公平厳正を旨とし、代表理事の先生からの指示を忠実に厳守して審査に当たりました。

◎大学・一般の部

課題は共に、近代文学の最たる詩人、島崎藤村「椰子の実」の詩文で、自然の恩恵、天地の真影を悟る、情緒溢れる課題は、作品が抱く「安心で明るい」テーマを、硬筆特有のタッチで、大学生らしい若々しさを紙面に用と美の結合構成を見事に表白し、正整と、リズムを持つ時の流れを六行に、余白と草書、行書特有の書体で、ポリシーを表現、大学生の知性と豊かな感性そして技法が高揚された絶品ぞろいでした。今回はユニバステイーとして大学院生の出品を見た事は、高等教育のマスタの学際への移行と、普及発展を欣喜得ない感動でした。又、一般の方々の出品作は、今回のテーマがそのまま、生涯教育、自己実現を夢見、希望の硬筆書きは、力強さ、草書のリズム感、個性美の表白、構成の変化は見事で、鑑別に当たり、甲、乙の評価に悩む程の出来ばえでした。成人教育、社会教育の重要性を理解し、痛感する尊い中央審査会でありました。


一社)全国書写書道教育振興会顧問
渡辺富美雄

継続は力

33回全国硬筆コンクールで受賞された皆さんおめでとうございます。主として中学生の作品を拝見いたしました。中学一年は1,183点、二年生は1,234点三年生は755点でした。この多くの作品の中からの受賞です。この作品を書き上げるまでの努力している姿が眼に浮かびます。中には、毎年出品して下さる人がおりますが、その上達ぶりに感激します。なんといっても継続することは力です。作品にその努力が現れています。小学校では、片仮名、平仮名、漢字を丁寧に形を整えて正しく文字を書くことを中心に、点画を筆順に従って書くことの基礎・基本を勉強します。中学校では、必要に応じて、楷書で書いたり、早書きするための行書で書く行書の基本を学び、日常生活や学習に発展し、生活や学習の内容によっては、目的によって、書くための道具の選択などが必要とされます。学習や生活の幅が広がってきますので、筆記用具もそれに応じて工夫することが大切です。特に作品に仕上げるためには、用具の選択が大切ですね。文字はよくまとまっていても、始筆、運筆、終筆、仮名と仮名の連綿の工夫などすることによって、作品の出来映えが、まったく違ってきます。文字は言葉を教え、言葉は人の心を表現するものですね。その文字は人を表すと言われていますね。また来年も立派な作品を見せて下さい。


(一社)全国書写書道教育振興会顧問
吉田  宏

心に描いた目標を実現

第33回全国硬筆コンクールに入賞された皆さんおめでとうございます。
日々の練習を習慣として取組まれ、作品全体をまとめる力がご自身のものとなっていることが強く感じられる力作が全国より多数出品されたことを大変嬉しく感じております。
全作品を審査した所感を学年ごとに申し上げますので、次回の出品や練習に活かして頂きたいと思います。
<幼児>文字をマスに配置することを覚える。名前を書く位置に気をつける。
<小1>文章内にある漢字は、ひらがなに対してしっかり大きく書く。
<小2>「はらい」がある時、罫に触れたり、はみ出したりしないようにする。
<小3・4>文字を整えて書くことに加えて、中心は何処であるのかを考えマスに配置する。
<小5・6>行で書く時には、罫と文字の間にうまれる上下の余白を揃えるようにする。
<中学>行書作品では、連続した線や省略した線をしっかり理解し書き込むこと。曖昧なまま書いていると誤字となってしまうことがあります。また抑揚をつけるために選んだ筆記具とはいえ、太すぎる線を表現するのは「硬筆」として適切ではありません。
<高校・大学・一般>繊細な表現だけに固執するのでなく、全体を一つとしてまとめ、行間や罫との余白に気を配り配置をすること。また、行・草の字体について、字源を理解し研究することも大切です。
「どんな困難も成功への通過点と思って堪える」といいます。どんなに難しいと思うことでも、一つひとつ練習を積み、他の人が出来そうでできないことを続けていくこと。そのような気持ちで用紙に向かったならば、更に一段上の作品が出来上がることでしょう。また次回の出品をお待ちしております。
最後になりましたが、大会を開催させて頂くにあたり、御指導にあたられた先生方、そして何時も温かいお心で子どもたちを見守り応援くださるご家族の皆様に心より感謝申し上げます。


前佛教大学添削指導員
加藤 俶子

審査会に参加して

33回全国硬筆コンクール中央審査会に参加させていただき全国各地より応募されました皆さんの作品を拝見し審査させていただきました。そして入賞されました皆さん、おめでとうございます。今回の審査は高校生の部を担当致しました。出品されました作品は、美しく見事な作品が多く、甲、乙つけがたく少しの差も見逃す事のないよう真剣に取りくみました。まず、白紙の中に文字を書くという事は、全体のバランスを考えて、漢字、仮名まじり作品の構成として天・地・左・右の余白の取り方、文字の大きさ、行間の取り方等さまざまな努力により自らの技量を高め清書した作品を出品されているように思われました。少し残念に思われた事は名前の位置、大きさを工夫したらもっと全体がすばらしい作品になったのではという思いがしました。次回も今回以上の方々の御参加、受賞されました皆さんも更に練習を重ねられ、すばらしい作品の出品を希望致します。


元東京都小学校国語教育研究会書写部長
永島 國雄

最終審査を終えて

33回全国硬筆コンクールに受賞された皆さん、おめでとうございます。最終審査に集められた作品を見ますと、どれもが練習を重ね、ていねいに書かれた努力の跡がうかがわれ感動しました。今回は、中学校の作品を中心に審査させていただきました。全体に字配りや字形は良好でした。さらに、上位の作品を選ぶにあたっては以下の観点で見させていただきました。

・硬筆用具の違いはありますが、一画(一筆)の線質(始筆・送筆・終筆の筆圧のかけ方)

・行書は運筆の流れ。

・罫(行)に対しての文字の大きさ。漢字とひらがなの大きさ。

・「葉・毎」の横画の長さと向き。

書写の上達は、よい手本の出会いとどこをどのように書くのかということだと思います。次回も皆さんの作品を見ることを楽しみにしています。


元東京都中学校書写研究会長
浅井 幸夫

私たちの周りにはいろいろな数があります。60秒が一分、60分が一時間、24時間が一日、52週365日が一年ですが多少の誤差が生じ、調整のため4年に一度閏年が設けられています。
四年に一度のオリンピックが2020年東京で行われます。1/100秒を競う100M走、42.195KMを速く走ることを競うマラソンは大会の華と言われ、選手は人類の限界に挑戦し続けています。スポーツには制限時間内で得点を競うもの、制限時間を設けず得点の過多で勝負を決するものがあります。
ところで、本コンクールも年月を重ね33回を迎えました。審査会の冒頭加藤達成先生から、中国では33という数字は大変縁起の良い数だというお話がありました。縁起の良い大会に入賞された皆さん、おめでとうございます。
来年全国高等学校野球選手権大会は100回を迎えます。その間の名勝負、名選手が生まれています。その様子はマスコミを通じて大々的に報道され語り継がれて来ました。残念ながら本コンクールが全国ネットで報道されるような事はありませんが、審査は厳正に行われ僅かな優劣を巡って意見が交錯するのは名勝負に当り、応募し続ける人の中には名選手に当るような方々も出現しています。
本コンクールも数の上では減少傾向にありますが人口減という現実は避けようがありません。50回100回と続く意義あるコンクールにする為に継続して応募されることを望んで止みません。


日本武道館書写書道手本筆者
西城  研

生涯学習としての硬筆の成果が


第33回全国硬筆コンクールに入賞された皆さん、おめでとうございます。
毛筆に比べ、日常生活において実用性の高い硬筆ですが、時折、読解の難しい独特の字を見かけることがあります。文字は、記録や伝達の手段にもなりますから、整った読みやすい字を書きたいものです。
今回は高校生作品の審査を担当しましたが、どれもとても読みやすい文字で書かれていました。ただ、普段から丁寧に書いているか否かの差が線に現れていたように思います。手本をよく見て上手に書かれているものの、運筆に躍動感が無い作品が幾つか見受けられました。遅速や強弱があると更によくなると思います。
レベルの高いこの大会では、高校生ともなると、字形の他に、筆記具の扱い方や枠内の配置、線質、更に作品に気韻が求められるかと思います。今後も高いところに目標を置き、日頃から正しく整った文字を書くよう心がけてほしいと思いました。


清光書道会理事
氷田 光子

審査をおえて

33回全国硬筆コンクールで入賞された皆さん、おめでとうございます。今回は、小学校の中学年、高学年の作品を見させていただきました。各学年上位三名までは何れも優劣つけがたく、すべての先生方に見ていただき、厳正な審査をしました。

 今回の課題には、小三、小五、小六に今まであまり出て来なかった片仮名がありました。片仮名は、漢字の一部が片仮名になったので、片仮名だからといって一画一画を曲線にしないで、どちらかといえば直線的に書いた方が良いと思いました。また、今回消ゴムを使い、紙面が少し汚れていて順位が下がった残念な作品が数点ありました。字消板という製図などで使う用具を用いるのも一つの手段です。消したい部分のまわりに付箋くらいの大きさのコピー用紙を数枚他の字を隠すように置き、置いた紙が動かないように消したい部分を消せばきれいに消す事ができます。紙の置き方を工夫すれば、一字の中の一部分だけでもきれいに消す事が出来るのです。

 また来年も今回よりも多くのすばらしい作品を楽しみにしています。


元東京都青梅市立新町小学校教諭・課題撰者
小野  博

審査にあたって

 第33回全国硬筆コンクールにおいて栄ある受賞に輝いた皆様、おめでとうございます。心からお喜び申し上げます。 少子化の関係でしょうか、応募数の減少がみられ少し淋しい気がいたしました。今回は小学3年生から6年までの作品を審査いたしました。書きこむことで、すばらしい文字感覚、書写感覚が自然と身についたのでしょう。上位を占めた作品は、筆使い、字形、漢字と仮名との調和、中心の取り方、運筆の快いリズム、全体の流れ、それに氏名の収め方に至るまで、いずれも完成度の高い作品が多く目につきました。また、均斉、均衡のとれた整斉の美しさがあり、全体の統一感が傑出していて爽やかな感じがしました。一日一日の練習の積み重ねの中で書に対する認識を一層深め、書くことへの熱意と情熱を更に深めるよう努力してください。

 次回も、また、一層の努力と習練を重ねすばらしい作品を出品されることを期待しております。


元立正大学大学院文学研究科教授
松村 定男

書は人なり

 受賞者の皆さんおめでとうございます。

 今回の作品で、字形がとても良かったのですが、線質があと一歩の作品が見受けられました。筆記用具の選択及び筆圧の工夫をして下さい。名前が大きすぎる作品が数点ありました。本文の大きさにあわせて名前を書く。本文の行の書き始めをそろえる。縦の行が曲がらないように書くと、なお一層よい作品になります。

 書家の鈴木翠軒先生は、『翠軒先生書談』の中で、「書は人なり」を次のように述べています。「全人物の躍動する立派な書をかくには矢張立派な人物とならなくてはならぬ。立派な人物を造る様にすればキッと字も上手になる。只筆先ばかりで書くことを教えず、人間全体として書をかく様にしなければ、いくら習っても本格的な書は書ける様になるものでない」人間性を磨きながら練習に励み、より立派な作品が完成することを期待します。


(一社)全国書写書道教育振興会副会長・日本書写書道検定委員会会長
吉田 享子

姿勢と持ち方

33回全国硬筆でコンクール受賞された皆さんおめでとうございます。毎年受賞者の代表の方が表彰され、その中で受賞作品の席書が行われています。人前で書くのは大変な事と思いますが、見事な作品を仕上げていらっしゃいます。鉛筆やペンの持ち姿も素晴らしく、背筋がすっと伸び軽やかに書かれている姿に接すると、全てが美しく感じられます。そして鉛筆を正しく持つことは、文字を書くための効率が良く疲れにくくなりますね。ですからたくさんの練習も可能になり、よりよい作品が仕上がるのでしょう。また勉強においても正しい持ち方・姿勢は、書くことでの疲れを軽減でき、綺麗な文字が書けるということだけではなく、学生のみなさんの勉強効率にも大きく貢献していることと思います。みなさんが身につけた実力を大切に、いろいろな場面で生かしていってください。最後になりましたが、本大会にご尽力いただきました皆様にこころより感謝申し上げます。


元東京都小学校国語科書写研究員

小野 千香子

審査を終えて

33回全国硬筆コンクールで受賞されたみなさん、おめでとうございます。今回は年中以下、年長、小学校一・二年生の作品を審査させて頂きました。一字一字丁寧に書かれた作品を拝見して、指導された方のご苦労が多かったとお察しいたします。作品の中には、線の始まりから線の終わりまで力を入れすぎて固く細い線になり、とめ、はね、払いの判断がつきにくい文字もありました。作品を並べて見ますと、上位の作品は一字一字丁寧に書かれ、とめ、はね、払いがはっきりとして、書き慣れた文字の線質はきれいで字形が整っていました。書き出し(始筆)を見ても鉛筆の使い方に気をつけているのが見えます。日頃の練習では柔らかい鉛筆(B・2Bなど)で筆順に気をつけて繰り返し練習することです。書き慣れると始筆、送筆、終筆の一連の動きがわかり、運筆のリズムもつかめて線質もさえてきます。字形も整ってきます。先生や保護者の方のご指導には忍耐が必要だと思いますが、お子様のためにも正しく整った文字が並ぶ良い環境を設定して支援してください。次回も素晴らしい作品が寄せられることを期待しています。


日本書写書道検定委員会審査副部長
中里 久乃

審査を終えて

33回全国硬筆コンクールにおいて入賞された皆さん、おめでとうございます。

 今回は、幼児から小学二年生までを審査させていただきました。小さな低学年の皆さんが一文字一文字真剣に書いている様子が伝わってきました。低学年だと漢字は難しいと思いますが、上位の作品はとても堂々としっかり書けたすばらしい作品でした。また、線が細かったり薄かったりすると作品全体の印象が弱くなってしまいます。低学年では自分一人では気づかないと思いますので、指導される先生方には、用具(鉛筆)の選択、筆圧、字形、名前の位置など適切な指導をしていただけたらさらに上達することと思います。 幼児の出品は幼稚園からの参加が多く大変うれしく思います。このように小さい頃から文字を丁寧に書く習慣をこれからも続けてほしいと思います。次回もさらにレベルアップしたすばらしい作品を期待しています。