第32回 全国ひらがな・かきかたコンクール
当法人では、文部科学省の学習指導要領に基づいた書写教育の普及に寄与することを目的とし、年間5つの全国コンクールおよび展覧会を開催致しております。 本コンクールは、私たちの綴る文章の約60%がひらがなであることを顧慮し、最も手書き文字に触れる機会の多い幼児~小学6年生を対象に開催しております。作品締切に集まった応募作品は、中央審査委員の先生方により、厳正かつ公平な審査が行なわれ、各賞が決定いたしました。 審査委員の先生方および特別賞受賞者のコメント・作品掲載は下記よりご覧ください。ネット展は現在開催中です。困難にうちかって学ぶ力、書写する喜び
中央審査委員長 (一社)全国書写書道教育振興会
会長 栁下 昭夫

全国ひらがな・かきかたコンクールも、今回で32回を数えますが、本年は特に、新型コロナウイルスの感染拡大、長びく梅雨と豪雨被害など様々な異常事態が重なり、どうなることかと心配し、事務局でも様々な工夫をこらして、みなさんの学びの力に生きるようなコンクールにしたいと努力しました。応募作品は、例年より少なくなったとはいえ、出品された作品は実に見事で、例年に劣らない充実したコンクールにできましたことを、心より感謝いたします。
ひらがなは、日本人が生み出した世界に誇る文字文化です。長い間にわたる日本人の美意識によってみがかれたその美しく豊かな字形、線質は心にしみます。シンプルで書きやすく、時に幼児期から小学校時代の学びが大切で、その時代の学びの力は、生涯にわたって生きつづけます。応募された作品のすばらしさには感動しました。ていねいに心をこめ、気持ちを集中して真剣に書写しているみなさんのお姿が目に浮かんできました。しっかりした筆力、整った字形、見事です。学年が進むにつれ、毛筆の扱い方にも習熟し、ひらがなの特質を生かした筆圧のかけ方、自然な運筆、紙面への文字のおさめ方にも心が行きとどき感心しました。特に硬筆作品はすばらしい出来栄えでした。字形も整い、線質がきれいで、紙面に対する文字の大きさ、文字の大きさに即した線の太さ、字間、行間のとり方もほどよく、読みやすく、きれいな作品に仕上がっていました。
これらの作品は、ネット展に公開され、多くの人々がご覧いただけることになっています。きっと見る人に感動を与え、よし、私もこんなふうに書いてみたいという思いにかられる人も多いと思います。このコンクールが多くの人に理解され、愛され、書写する充実感と喜びを味わっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
学びに向かう力
(一社)全国書写書道教育振興会顧問 吉田 宏

はじめに、新型コロナウィルス感染の影響を受けられた皆様そして、令和2年7月豪雨に伴う災害により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
3月から幼稚園や保育園、学校生活が制限され、全国のお友達はどれだけ心を痛めているだろうと心配していました。
目に見えない、立ち向かいようがない状況に、人は「恐怖」を感じます。恐怖はいずれ人の心を奪い、本当に大切なものを見えなくしてしまいます。日々変わる情報、『新しい生活様式』とうたわれ、急速に変わる状況の中、大人の我々でも不安が伴います。一生のうち一度といわれていた行事は次々と中止になりました。楽しみにしていた方も大勢いらっしゃることでしょう。それらが『自粛』という言葉ですべて無くなってしまったのです。
けれど、私たちは学びの歩みを止めてはいけません。
全書会では、皆さんが学校で取り組んでいる「オンライン学習」のように、書写の練習を楽しんでいただける機会をホームページに設けました。するとどうでしょう?新しく用意した動画ページは、文部科学省や教育委員会の方の目にとまり、様々なところで書写の学びを紹介していただける場となりました。そして、いよいよコンクール締切が近くなると全国の先生方、保護者の皆様のお力添えにより、小さなお友達のこんなにも素晴らしい力作が集まったことに、私は必ずこの困難な時間を糧として共に乗り越え、共に強くなることができると確信しました。
今までの生活規則は皆さんの心身を育む過程になくてはならないものでしたが、何事も以前と同じように進めることは難しく、過ぎゆく時間をどのように感じ、考えて行動できるかが大切な課題となりました。書写書道という一つの目標に向かって日頃から励んでいる皆さんならきっと逞しく過ごしてくれるものと信じています。
最後になりましたが、本年度は特に制約の多い中で、全書会の活動にご尽力を賜りました関係者の皆様、貴重なご指導の機会を作ってくださった先生方、そしていつも温かいお心で子供たちを送り出してくださるご家族の皆様に心より御礼申し上げます。
「ひらがなの歴史」
元立正大学大学院文学研究科教授 松村 定男

第32回全国ひらがな・かきかたコンクールの受賞者の皆さん、おめでとうございます。
幼年、低学年の作品は、力強く堂々と伸びやかな書でした。
高学年になるにつれ、文字の配置、大きさも良く、一画一画をていねいに書き、ひらがなのやわらかさと強さを感じる作品でした。
本文と同じように名前も大事です。
○ 名前の字形の一画の始筆(書き始め)と終筆(書きおわり)をしっかり筆圧をかけて書くとさらに美しい線質になります。
○ 横画が数画ならんだ時は、空間(あき)を等しくするとスッキリした字形になります。
○ 名前が漢字とひらがなの場合、漢字をひらがなより少し大きく書くと良いバランスになります。
○ 長い縦画を書く時、終筆(書きおわり)のところで線が弱くなったり、曲がったりしないように最後まで、ていねいに書きます。
○ 本文の字の大きさとバランスを考えて、名前の大きさを書きます。
ひらがなの歴史を学び、ひらがなを理解して行きましょう。『書写・書道用語辞典』第一法規出版「平仮名(ひらがな)」によると「平安期初期から中期にかけて、草仮名をなお簡略化し、美しくみやびやかに形をつくっていって、漢字から独立した文字の一体を完成させた。これが平仮名である。仮名の発達は、日本語の記録を容易にし、表現を豊かにした。女性は平仮名を駆使して『源氏物語』をはじめ、数々の文学を書き著していった。平仮名の発明が平安期文学の華を咲かせたいわば原動力になっている。今日、平仮名が一音一字になっているのは、明治33(1900)年の小学校令施行規制による。」
このような歴史をもつひらがなを大切に書いていって下さい。名前も本文と同じ気持で書き、よりすばらしい作品を表現して下さい。
コロナ禍の影響
元東京都青梅市立新町小学校教諭 小野 博

◎ 全国ひらがな・かきかたコンクールにおいて栄ある入賞・入選に輝いた皆さん、おめでとうございます。
◎ 新型コロナウィルス感染症が全国的な規模で各地に蔓延し、政府の緊急事態宣言発令に伴って学校が休校に追いこまれたり、また、書塾の閉鎖などが相ついだりして書分野の教育がすっかり麻痺状態となり大きな打撃をこうむりました。以上のような関係で作品の応募数が大幅に激減し、前回の半分になるという事態で非常に残念なことです。こうした大変な時節にもかかわらず熱心に書写の作品に取り組まれ出品して頂いた皆様方の作品を感謝の気持ちで審査いたしました。
◎ 緊急事態撤廃後、政府の方針も少しずつ改善される方向に向かってはいますが、コロナ禍の今後の趨勢を見守りながら早く治まることを願うのみです。
◎ ひらがなを上手に紙面に収めるには、文字の大きさに気を付けることです。ます目や罫線の中に程よい大きさで書くことです。ます目や罫線に、目いっぱい大きく書くと全体の美しさがそこなわれてしまいます。また、字が細く小さ過ぎると人に訴える力が弱まります。このような点に気をつけて作品を仕上げてみましょう。
◎ 書写の練習は単なる文字の上達のみにとどまることなく、文章の正しい理解と豊かな表現力を目ざして今後もたゆむことのない努力を続けてください。
審査にあたり
(一社)全国書写書道教育振興会副会長・日本書写書道検定委員会会長 吉田 琴泉
本年は緊急事態宣言・学校の休校など、想像もしなかった困難に見舞われた年となってしまいました。日々繰り広げられる異常事態の中、大会をめざして練習している皆さんに少しでも今までの日常をお届けしようと、本年は大会課題の動画配信を行いました。1文字ごとの手本動画・学年別のポイント説明などを配信いたしました。「動画を見ながら練習しましています!」「動画は、鉛筆の使い方がわかりやすい」など、うれしい連絡もいただきました。また、「書いている時間は心が落ち着く」との声もいただき、不安で心が落ち着かないこんな時期だからこそ、「丁寧に文字を書く」ということが「心を整える」一端を担えることを実感しました。
そんな中、送られてきた作品はどれも素晴らしく、心がこもっていました。特にトップに輝く賞を受賞された皆さんは、文字のポイントを押さえていることはもちろん、この「コロナ禍」の中しっかりと書き込んだのだろうということがわかる素晴らしい作品でした。書き込んだ作品には、運筆に迷いがありません。(筆でも鉛筆でも)リズムさえも感じます。ひらがなの作品には、文字の成り立ちから言っても運筆の流れは重要です。
鉛筆の作品では、「筆圧」が大きなポイントです。書く力が弱すぎて弱々しくなっているもの、また力が強すぎてぎこちなくなってしまっているもの、ちょうど良さはなかなか難しいものです。自分にあった鉛筆の濃さを選び、筆圧の弱い方は柔らかい下敷きを使うと良いと思います。
毛筆の作品では、名前までが作品と考え全体の調和を考えましょう。今回、課題はうまく書いているのに名前の位置が悪く評価が下がった作品が見受けられました。名前については大きさも大切です。特に文字数が多い皆さんは気をつけてください。課題も名前もそれぞれうまく書けているのに、あまりにも名前が小さい作品などがありました。
最後になりましたが、締切間際に発生した豪雨により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。本年は長引く梅雨と豪雨災害、全国民が想像もしなかった「コロナ禍」の中、作品をご出品いただき、ありがとうございます。またこのような困難の中、大会をご支援いただきましたすべての皆様にお礼申し上げます。
少しでもはやくすべての困難が収束することを願うとともに、本大会が少しでも皆様の日常を保つ一端になれるよう、尽力してまいりたいと思っております。
美しいひらがな
日本書写書道検定委員会審査副部長 中里 久乃
第32回全国ひらがな・かきかたコンクールに入賞された皆さん、おめでとうございます。
今回はコロナウイルス感染拡大の影響を受けて学校、幼稚園、書道塾等の休講により思うように指導が受けられなかったことと思います。その為出品点数の減少もありました。でもそんな中で、一生懸命に練習に励んで出品してくださった皆さんの作品は、努力の成果が伝わる素晴らしい作品でした。学年が進むにつれてレベルも高くなり甲乙つけがたく大変悩まされました。
硬筆の部では、自分に合った鉛筆を選び、筆圧、字形、大きさ、線質、中心の取り方も良く一文字一文字丁寧に仕上げた作品が上位に上がってきました。高学年は罫線の用紙ですので、行が曲がりやすくなる為、中心を良く見ながら書くと良いと思います。また、消しゴムを使い消し跡がしっかり残っている作品もありましたが、できればあまり消さないで書けるように仕上げてほしいと思います。
毛筆の部では、基礎基本のできているしっかりとした筆使いで全体のバランスがとれている堂々とした立派な作品が多くありました。でも中には、課題はしっかり書けているのに名前の入れ方がもう少しということで、順番が下がった作品もありました。課題によっては、名前の入れ方がとても難しくなる事がありますが、作品全体を良く見てバランス良く仕上げる事が大切です。
ひらがなは、曲線が多く筆圧のかけ方でとても美しく表現できます。このひらがなを小さい頃からしっかり学び、美しい文字をこれからの日常生活に役立ててください。
来年も更に磨きをかけた素晴らしい作品に出会えることを楽しみにしています。
文部科学大臣賞
ひらがな名誉大賞
日本書写技能検定協会理事長賞
特別ダイヤモンド賞
文部科学大臣賞
ひらがな名誉大賞
日本書写技能検定協会理事長賞
特別ダイヤモンド賞
スタールビー賞
●入賞者数一覧

●受賞記念品のご案内
受賞作品は、ご出品されたその時の大きな宝物です。本コンクールでは、毛筆表装、特製アルバム、受賞者名簿、受賞証明書のほか、装い新たに「作品かけ」をご用意し受賞記念品として、すべての方にお申込みいただけるよう準備を整えております。
ご出品いただいた団体様宛に各自配布いただけるよう『個人成績通知』を送付させていただいております。通知の下段が『受賞記念品申込書』となっておりますので、ぜひお申込みください。