審査講評

大会委員長

一般社団法人 全国書写書道教育振興会

会長 栁下 昭夫

深い学び、生涯に生きる書写書道展

 全国学生書写書道展も42回を迎え、皆様のご尽力、ご協力により、優れた作品展にできましたことを嬉しく思います。本展は、地区席書大会参加作品と公募による作品とをあわせた他に類を見ない書写書道展として多くの方々から大きな期待が寄せられております。特に本年は西日本の豪雨被害、猛暑等異常気象の中で行われた全国24地区の席書大会に参加された皆さん、運営、指導にあたられた先生方、ご関係の皆様のご労苦に思いをいたし、心より感謝申し上げます。出品された皆さんの作品は、どの作品もすばらしく、皆さんのご努力に心をうたれました。席書の部は課題が決められていますが公募の部は自由課題になっています。しかし、本展は学習指導要領に基づいた書写書道教育の普及に寄与することを基本としておりますので、作品の文字、言葉は、発達段階に即して理解され書写できる文字であってほしいと思っております。

 今日の通信手段は多様化し、手書き文字が減少してきているといわれておりますが、しかし、文字を手書きするということは、言葉を理解し、考えを深め、表現力の基礎となる大切な学習であると思います。これからの教育では、深い学びが求められ、入学試験問題の解答でも手書きの解答が多くなっています。書写書道の学習が皆さんの言葉を広め考えを深め、生涯にわたって皆さんの生きる力となりますように願っております。


審査委員長  元佛教大学教授・文学博士・毎日書道会書教育問題顧問
加藤 達成

芸術科書道の基本を確立した、毛筆表現

佛教大学教授・文学博士・毎日書道会書教育問題顧問

 第42回全国学生書写書道展、毛筆による学年日本一決定の中央審査会に出席された役員、及び審査委員26名、本年は改組による審査会で緊張を覚えた。事務局代表理事により審査に当っての総括と基準が懇切に説明された。特に大綱は文部省学習指導要領による指導事項に準拠することの指示を受けた。

 本展は長い歴史と、広い地域、その上国際書道との交流展と発展を見るに到った。偏に名誉会長吉田宏先生の未来志向と情熱に外ならない。啓眼含蓄に敬服、42回展の意義をに体得した。

 今回の審査対象の学年は、大学、高等学校の分野で、私と吉田享子先生、鈴木世津子先生、上遠野智先生4名で担当した。席書、公募の優秀候補作品は一部審査で勝ち抜いた名品ぞろいであった。席書は全国各地24個所の規定作品で、又公募は団体及び個人の独自創作々品で、伝統と未来に挑戦した、書道文化の力作を鑑みた。

① 高等学校の部

 文部省学習指導要領では、高等学校芸術科の目標は「生涯にわたって書を愛好する心情を養う。」と示され、教科目1、2、3総合では、「書道教育による情操を高める、表現・鑑賞学習」と皇示され、今回の審査項目の主要を表現領域における、漢字の書、仮名の書、漢字仮名交りの書の臨書、創作に、個人の感性と基礎基本の完成度を中心に鑑別しました。課題は(A)樹涼山意秋。(五体)(B)草の葉を落つるより飛ぶ蛍かな(平仮名、草体、調和体)、A・Bともに文化史上の書美に卓越した作品を、書法に又は審査項目に当てはまる作品を選定、各賞にふさわしい作品を鑑別、評価、42回展の逸品を判定、最終段階は顧問先生との合意と全審査委員の承諾の上に決定を見る事ができた。今回の出品作品の特色は、毛筆表現による、力強い運筆と語句、詩歌の持つ文学性を豊に表白、また構成美、余白、濃淡、強弱、大小等のバランスの美的表白は高度な表現が熟成されたと、高校生の力量に感服させられた。

② 大学・専門学校の部

 C・D、自由の3分野、これら課題は漢詩文、和歌等がそれに加えて学生が愛好する語句、詩歌を自由選択のできる魅力ある学域である。

 席書、公募は半切を立てまえとして、規定課題(A)日暖魚跳波面静 風軽鳥語樹隠涼 七言古詩()

 (B)秋風のたなびく雲の絶えまより……和歌(藤原)

 大学生の知性と熟練した技法による表現は年ごとに向上発展、喜ばしい。42回展では、6・3・3・4学制を新春に終える、心技体の結晶作品に感動した。個性溢れる自由出品の部位には、優れた作品が多く、「書は勢なり」の諺の如き力作で共感を覚えた。上位の学生は将来、生涯に亘る書の愛好者として育成される事を以って講評を終る。“芸は身を助く”

 


東京学芸大学教授
長野 秀章

第42回全国学生書写書道展に寄せて

長野 秀章(竹軒)  東京学芸大学名誉教授

 第42回展の開催まことにおめでとうございます。中央審査員の一人として本年も素晴らしい作品を審査させていただきました。これまで文字の基本を押えて毛筆で表現された作品を仕上げられた児童・生徒・学生の皆さんに対して心より敬意を表したいと思います。

 この大会に入選、入賞されたことは、全国的にも高いレベルの大会ということでどうぞこれからも自信を持ってこの書写や書道のお勉強を続けていただくことを期待しております。

 ご指導に当たられた先生方、保護者の皆々様におかれましては、この全書会が進めております“広げよう心が通う手書き文字”という我が国の文字文化の大切さを前面に出した、いわば文化運動をご理解いただき、これからもこの理念の基ご協力をいただけると幸いでございます。

 この書道展は、小・中学生の時代だけで終るのではなく、生涯にわたって手書き文字の大切さを伝え、書という我が国の文化に親しむことが重要な事です。

 ご参加された皆さん、また来年も是非参加され書写・書道の学びを続けていただくことをお願いして審査所感とさせていただきます。


(一社)全国書写書道教育振興会顧問
吉田  宏

「困難にあった時こそ、自己の運命を切り開くチャンス」

第42回全国学生書写書道展入賞の皆さん、おめでとうございます。

本年も全国各地に加え、海外からの参加もいただき、毎年のことながら多くの力作が集まりました。

 今年は例年に比べると、気温がかなり高く「酷暑」という報道が連日聞かれました。今回の席書決勝は全国24の会場で実施いたしました。どの会場でも暑さとの闘いであったと聞いております。

 「困難にあった時こそ、自己の運命を切り開くチャンス」

 本番当日まで汗を拭いながら練習を繰り返し、どんな状況でも気持ちを集中させ、筆を握り、二枚の限られた用紙に書き上げる席書。会場は、墨の香につつまれ、粛然とした空気が流れ、筆と紙が触れる音が聞こえてくるようでした。また、公募作品は、練習を繰り返した努力の結果が感じられる力作が勢ぞろいでした。

 夏休みの間、こんな体験をしたことが正に運命を切り開きました!全国大会は、結果として優劣がつきますが、それよりも更に大切な事は、この大会に参加すると決め、酷暑の中でも練習に通い、本番にも精一杯の力を注いだ…今すぐにその結果が出るわけではありません。この夏に皆さんが育んだ、技量、精神力はいずれ必ず何処かで、皆さんの力となり助けとなることでしょう。是非これからも目標を掲げ頑張ってください。「努力に勝る天才なし」なのです。

 最後になりましたが、本大会を開催するにあたり、中央審査員の先生方、会場運営をつとめてくださった全国の会場責任者の先生方、ご指導にあたられた先生方、地域の皆様、そしていつも温かいお心で子供たちを見守り応援してくださるご家族の皆様に心より感謝申し上げます。


日本武道館勝浦研修センター講師
加藤 俶子

中央審査会に参加して

第四十二回全国学生書写書道展中央審査会に参加させて戴き小学校四年生、五年生の作品を拝見致しました。

 まず、第四学年の審査基準は、文字の組立て方に注意して、文字の形を整え、大きさや配列に注意して、読み易いように書くこと。

 毛筆を使用しての点画の接し方、交わり方、方向などに注意しながら文字の中心、画と画との間など文字の形を整えて書かれているかどうかという観点で作品を選出しました。

 第五学年については、書かれた文字の形、大きさ、配列などのよしあしを見分け、文字を書くときに役立てること。毛筆を使用して文字の組立方に注意しながら、文字の形を整えて書くこと。毛筆を使用して、文字の大きさなどに注意しながら、字配りよく書くこと。

 という基本の基に審査致しました。どの作品も、すばらしく甲乙つけがたい仕上がりでした。これからの作品づくりは、是非、バランス良く、紙面に入れて欲しいと思いました。 これからの向上に期待し、良い作品にあえる事を楽しみにしております。

 受賞者の皆さんおめでとうございました。


日本書写書道検定委員会会長
吉田 享子 (一社)全国書写書道教育振興会副会長

作品の仕上げの最後の留意点

思いもよらぬ災害や猛暑が続いた今年の夏、無事に本書道展が終了いたしましたことに、関係各所の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 席書大会においては練習もさることながら、席書期間中も猛暑が続いていた頃です。参加された皆さんもこのような悪条件の中、2枚のみでの作品仕上げは大変だったことと思います。でもそんな条件の中だからこそ、入賞はまた大きな価値を生み出します。入賞された皆さん本当におめでとうございます。

 本年もほんとうに力作揃いの作品がそろっていました。また、中国から出品された作品はこれが小学生の作品なのかしら、、、と、驚くような作品でした。作品はネット展でぜひご覧ください。

 作品を仕上げるにあたり、課題のみならず名前を作品に調和させることも大切です。幼児から中学生の作品は、課題文字はとてもよくできているのに名前が必要以上に小さかったり大きかったりとなってしまい、作品としてのバランスを崩してしまった作品が見られました。

 高校生以上の作品は、落款の位置・また落款印の位置が適切でなく作品のバランスを欠いてしまっている作品がありました。また、落款印を押す際は適切な大きさのものを曲がらないようにすることに留意してください。

 最後になりましたが、暖かく見守ってくださっているご家族の皆様に心より感謝もうしあげ、また来年も素晴らしい作品が寄せられることを心よりお待ちしています。


日本武道館書写書道手本筆者
西城  研(一社)全国書写書道教育振興会手本筆者

審査を終えて

 第四十二回全国学生書写書道展にご入賞の皆様、おめでとうございます。

 今回は、小六・中一を審査いたしました。六年生は特に力作揃いで、手本と見間違うほどの、穂先の動きと点画のつながりを意識した作品が多くありました。中一は「楷書または行書」と規定がありますが、中央審査の作品はほとんどが行書でした。意欲的な取り組みが現れた良い傾向だと感じました。しかし行書学習をはじめて数ヶ月での大会なので、まだ不慣れなせいか優秀作品の層は厚くないようでした。

 どちらの学年も、良い作品は

・中心が通っていました。

・紙に対する字の大きさがちょうど良く、字と字の間の空間の取り方が上手でした。

・氏名まで一貫した筆づかいでした。

・線に迷いがなく、自信のある運筆でした。

 これは書き込みの量で差がついてくるものだと思います。今回国際部の審査もしましたが、台湾の小・中学生の作品のレベルの高さには驚きました。日本と学習方法は違うと思いますが、筆を持つ時間が圧倒的に多いのだと思います。

 やはり、良い手本を基に書き込むこと、一字毎ではなく全体を見て仕上げることが良い作品につながると思います。皆さんのこれからの文字の成長を楽しみにしております。


日本書写書道検定委員会審査副部長
中里 久乃

努力に勝る天才なし

中里 久乃  日本書写書道検定委員会審査副部長

 受賞された皆さん、おめでとうございます。全国各地、また海外からのそれぞれ努力されたすばらしい数多くの作品が集まりました。

 今回の中央審査会では、私は幼児から小学三年生を担当させていただきましたが、小さな子供達が一生懸命筆を持って書いている様子が伝わってきました。力強く丁寧にバランスが良く整った作品がやはり上位に上がってきました。そして注意してほしいのは、文字は紙からはみ出さないように、作品を汚さないようにしてください。何点かそのような作品が目につきました。また、最後の名前も重要な審査基準となりますので、しっかり書くと良いと思います。

 学年が高学年になるほど実力がついて見事な作品となっていきます。一年ごとの成長がとても楽しみです。是非上位入賞者の作品を参考に、目標を立ててそれに向かって努力する大切さを忘れずに前進してくださ。また来年も今年以上に多くの方の参加と力作を楽しみにしています。


宗像 澄苑  (一社)全国書写書道教育振興会理事

       群馬県 宗像学園学園長

「日頃の努力は一枚の作品にあり」

 第42回全国学生書写書道展中央審査に参加し小学六年生、中学一年生の審査を担当させていただきました。各地より多くの立派な作品が寄せられました。今年は夏の猛暑が続く中汗を流し練習を重ねている姿が作品の中より伺いしる事が出来ました。一点一点の作品が素晴らしく力作が多く見られました。席書の部では限られた時間とその場で二枚書き自分で決めて出品した作品です。練習上の注意をこの二枚に集中して書き上げることの難しさを感じます。「書写は正しく整った読みやすい文字」を心をこめて丁寧に書く事を目的に日頃より訓練されていることで一筆一筆がしっかり書かれていました。中学生になると課題も難しくなり、くずし方に注意して欲しいと思います。公募作品は課題は自由ですので、学年にふさわしい課題を決める事は大切です。

 ぜひ次回は一層励んでいただき努力した力作を期待しております。

 入賞された皆さんおめでとうございました。


松井 敬子  (一社)全国書写書道教育振興会理事

       兵庫県 aLive書写教室代表

「夏の書の思い出は宝物」

 今年で第42回を数える全国学生書写書道展に寄せられた心のこもった数々の作品から、素晴らしいパワーをいただき、同時に作品から伝わる皆さんの今までのたゆまぬ努力、先生方の熱き指導力に敬服致しました。

 今回は中学2・3年生を担当させて頂き、書写の根本となる「文字を正しく、整えて、読みやすく書く」について細部まで審査を行いました。皆さん大変難易度の高い文字をよく書きこんでおられました。「単にお手本をまねるだけではなく、文字をよく理解して書くこと」、「漢字とひらがなのバランス」、「余白のとり方」、「自然な運筆」について重点を置いて審査をする中で、書写書道は一筆一筆で作品の顔が変わる総合芸術であることを改めて感じました。

 楷書から行書に学びを進まれた中学生の皆さんは、高校から「書道」を学びます。今回のような大会出品を活用されることは、基礎基本となる「書写力」を学ぶ絶好の機会であり、この受賞の慶びを励みにして更にステップアップしていただきたいと思います。

 私自身、小学生の頃から本大会に連続出場した夏の書の思い出があります。「書」を継続してきた事が、いつの間にか自分の宝となり自分を表現する大切なものとなりました。

 出場の皆さん、これからも「書く」という事を通じて自分自身を鍛え、喜びや楽しさ、そして多くの出会いから夢をつかむ素敵な人生を歩んでください!


鈴木 世津子  元三重県立四日市高等学校非常勤講師

        三重県 鈴木書写書道学院代表

「気魄がひしひしと」

 異常気象だった猛暑の中で、紙面と向き合い大会に臨まれた皆さんの努力が、一点一画に表現され感動しました。私は高校、大学専門学校生の部門を、審査委員長の加藤先生のご指導のもと担当させて頂きました。

 席書の部では、日本の伝統文化の継承である「漢字かな混じり」の松尾芭蕉の句を、流れるように、優美に書かれた作品に接し、心が和みました。

 さて、審査基準となる墨の濃淡、潤渇等の活かし方、本文と自筆署名のバランスや、文字の大小の表現の仕方、余白の用い方等を考慮しながら審査いたしました。

 席書の制限時間の中で隷書二行書き漢詩作品や、公募では、連日の練習の成果が現れている作品が多く「圧巻」の一言に過ぎません。

 運筆にも躍動を感じる等、数多くの優秀な作品に接し、充実した審査会になりました。

 審査会終了後のごあいさつの中で、「来年、このように書いたら入賞出来る」という書く生徒の指針になる審査会でありたいと下会長の講評がありました。

 受賞された皆さん、本当におめでとうございます。


新井 由枝  群馬県 新井専修学院代表

「数多く書いた作品の躍動美」

 今回は幼児から小学三年生までの、席書・公募作品の担当をさせていただきました。

 文字の線質、基本点画に注意して書かれているか、形が整って正しく書かれているか、中心が取れているか等々留意し、厳正公平に審査致しました。

 幼児の部では、小さな体で沢山練習を積み席書大会に臨んで、精一杯書いたと思われる姿が見える様な元気良い作品にとても感心致しました。今後の成長が大変楽しみです。

 一年から三年生になりますと更に習熟度が増し、練習を積み重ねたと思われる成果が、線質に現われている作品が多く、甲乙つけがたく更に慎重を重ねて審査致しました。本文が整って書かれているのに、名前とのバランスがもう少しという作品があり残念です。名前の最後の一字を書き終えるまで、心をゆるめずに書くことが望ましいと思いました。一ヵ所の文字の整え方により順位が下がるという厳しさがあります。沢山書いて数多く続けて下さい。数多く書いた作品は、形もよくなり澄んだ線になり躍動を感じます。

 「正しく整った読みやすい文字」を書く事が日常出来る様、これからの精進を期待いたします。


峰村  香  長野県 信濃書写教室代表・大会手本筆者

「学び多き大会」

 受賞者の皆さん、おめでとうございます。

 今年は例年にない猛暑続きで、練習や席書大会当日は大変だったことと思います。汗を拭いながら真剣に紙と向き合っていた皆さんの姿が想像されます。今回の中央審査では小学四・五年生を担当させていただきました。

 席書は、席書会場という緊張感いっぱいの中で、制限時間の二十分間に集中して力を出し切ることは難しいことです。しかし、そんなプレッシャーを感じさせない堂々とした立派な作品が揃っていました。席書大会は技術の向上以外に精神を鍛え学ぶことが多い大会であると思います。公募部門は半紙作品から条幅作品まで多様な力作揃いでした。課題選びから始まり、期間内に作品を仕上げることは大変だったと思います。審査では、文字の中心、基本点画、折れ、はね、左右の払い、余白の取り方等を視点にしました。上位となった作品は、それらがしっかりできており、また漢字と仮名の大きさが調和よく、名前もバランスよく書かれていました。大会に出品するために根気よく熱心に練習し、その結果、文字が上達する喜びや達成感を感じた生徒さんも大勢いたことでしょう。技術の向上だけでなく、心の成長も大きくできた夏休みだったのではないでしょうか。ますます練習を重ねた素晴らしい作品に来年出会えることを楽しみにしています。